『アンドレイ』モスクワ その4 / Москва(4)

2008年ロシアの旅 / 2008 RUSSIA touring 

※このシリーズは、2008年の旅行記になります。渡航情報や現地の様子などは2008年当時のもので、現在では状況が大きく異なっている可能性があります。また、記憶が曖昧な部分もあり、間違った情報が記載されている事も考えられます。何かの参考にされる方は注意してください。
__________________________________________





6月19日 木曜日 

6時起床、今日は朝からアンドレイと会う事になった。
支度してモスクワのセントラルへ向かう。

朝のラッシュの中電車を乗り継ぎ地下鉄構内を歩いていると、遠くの方から音楽が聴こえてきた。石造りのメトロに響くその音の方へと歩を進める。生演奏っぽい。
音を辿って着いた場所にはアコーディオンを弾く老人がいた。座って柱にもたれ、自由自在にアコーディオンを弾いている。
どうやら目が見えないようだ。その盲目のアコーディオン弾きの奏でる音楽は素晴らしいものだった。



美しい旋律に歪な和音が重なる。鋭く突き刺さるような不協和音が自由自在に進行し、その上を美しい旋律が軽やかに舞う。それがメトロの反響音と複雑に絡まりあってあらゆる方向に音が飛び、あらゆる方向から音が飛んできて凄まじい音の広がりになっている。

即興演奏のようだが、崇高な現代音楽のような、フリージャズの未来のようにも思えるその音楽はどこまでも美しく、アコーディオンから発せられる様々な音が地下鉄構内に反響し、圧倒的な迫力で私に迫ってくる。

とてつもない演奏は途切れることなく続くが、音楽が穏やかになったところでハラショーと言って拍手し、アコーディオンの箱にチップを投げ入れる。
アンドレイとの待ち合わせの時間が迫っていたのだ。ずっと聴いていたかったが先に進まなければ・・・。
しばらく歩いて電車に乗り込むまでアコーディオンの音はずっと聞こえていた。
後頭部で聞いていたその音楽はこの世のものとは思えないほど美しく、何かとんでもないものを見たような気分だった。

8時、待ち合わせの駅に着くとアンドレイがやってきた。ついて来いと言われ、ついていくと、バスがある。そのバスに乗り込んだが、アンドレイは運転席に座る。
どうやらアンドレイの仕事はバスの運転手のようだ。そのままバスは走り出す。

バスは街をぐるりと回り、次々と人が乗ってくる。気が付けばバスは満員、途中で降りる者はいない。

しばらく走って大きなビルの前に止まると、一気に人が降りていく。
「スパシーバ」
降り際に客がこう言うとアンドレイは「パジャールスタ(どういたしまして)」と返す。
「スパシーバ」
「パジャールスタ」
「スパシーバ」
「パジャールスタ」
「スパシーバ」
「パジャール・・・」
アンドレイは全ての客に「パジャールスタ」と返す。

アンドレイが最後の客に「パジャールスタ」と言った後、私はこう言った。
「スパシーバ、パジャールスタ、スパシーバ、パジャールスタ、スパシーバ、パジャールスタ・・・、良い仕事だ」
全ての乗客がアンドレイに感謝し、アンドレイもそれに応えるのを見ていて、気分が良かったのだ。アンドレイは笑ってバスを発車する。

バスは車庫に入って行った。バスを降り、連れて行かれたのは先ほどの大きなビル、Билайн(Beeline ビーライン)の建物だ。ロシア最大級の携帯電話会社の本社がアンドレイの職場だった。

セキュリティーのオフィスに行ってゲストカードを受け取り、ビルの正面玄関から中に入る。
ビルの中は天井が高く開放的で、広々としたとても綺麗な空間だが、セキュリティーゲートがあり、さっき受け取ったゲストカードをかざし、ゲート開けて先に進む、という日本ではあまり見た事がない、まるで映画に出てくるような近未来的なビルだった。
ワクワクする・・・。

アンドレイに案内されて部屋に入ると数人の男がいる。どうやらアンドレイから私の事を聞いていたようで、みんな笑顔で歓迎してくれる。
コーヒーと朝飯を出してくれたのでありがたく頂く。
おそらくこの部屋はバスの運転手の待機場所、みんなアンドレイと同じで気がいい奴ばかりだ。しばしのリラックスタイム・・・。

カメラが欲しい。ハバロフスクを出てすぐに日本から持ってきていたカメラを落として壊してしまったので、ハバロフスクを出てから全然写真を撮れていなかったのだ、思い出した・・・。
アンドレイが車を出してくれる事になった。

私服に着替えたアンドレイとドライブ。おそらく勤務時間中だと思うが、自由に出来る時間があるのだろう。今まで出会ったロシア人は大抵こんな感じだった。みんないつ仕事しているのか分からないほどだ。プライベートの時間を大事にしていて、時間の使い方が上手い。仕事がないというパターンもあるだろうが、ほとんどが自らの意思でそうしているように思う。
会社と時間に縛られる日本の働き方とは随分違う。

ドライブミュージックはロックミュージック、70年代80年代の古いロックだ。オジーオズボーンの「Crazy Train」が掛かっている。アンドレイのアイドルはAC/DCだと言う。やはりバイカーはロック好きが多い。

アンドレイと一緒にいると、不思議だが、何故か昔からの親友のように思えてくる。何かは分からないが、強烈に惹きつけられるものがあるのだ。そして私をリスペクトし、守ろうとしてくれているのを感じる。私はそんなアンドレイが大好きだ。

店が密集する地帯で降り、アンドレイは職場に戻る。ここはАрбат アルバト、カメラはどこにあるやろか?
勘を頼りにカメラ屋を探す。雑居ビルに入って最上階までくまなく探す、を何回か繰り返し、ついにカメラ屋を発見。
古い機材と古いカメラでいっぱいの店内で安いカメラを探し、手頃なカメラを見つけた。













中古のカメラを購入して早速試し撮り。と言っても、フィルムカメラだからきちんと撮れているかは現像してからのお楽しみだな。






記念にカメラ屋のオヤジさんを撮影。





マクドナルドでしょんべんしてウロウロしていると突然電話が鳴った。
アンドレイの同僚のウラジミールだ。さっきビーラインのオフィスで電話番号を交換していた。どうやら車で迎えに来ると言っているようだ。
しばらくするとウラジミールが車に乗ってやってきた。どこかに連れて行ってくれるようだ。ウラジミールの車に乗り込む。





着いたのはアイスリンク。わけがわからん・・・。





趣味かプロか分からないが、アイスホッケーの世界選手権が開かれた会場でアイスホッケーが始まった。





いやいやいきなり着せられてもなんもでけへんて・・・。





エントランスにはトロフィーがいっぱい。
ウラジミールってもしかしてすごい人なんやろか・・・?
いや、きっと趣味だろう、いい趣味だな。





記念にホッケーの球を頂く。
帰りは知らん奴の車に乗ってヴィタリーの家に向かう。知らん奴もめちゃ親切。
駅に着くとヴィタリーがいて、送ってくれた知らん奴にありがとうと言ってヴィタリーと共に家に帰る。

いつものメニュー、ペリメニメインの晩御飯を食べて、そこからはロシア語の勉強。
ヴィタリーは英語と日本語を少し話せるので、いいロシア語の先生だ。
ロシア語講座は夜遅くまで続く・・・。





次は>『ヴィタリー』モスクワ その5 / Москва(5)





にほんブログ村 バイクブログ ハーレーダビッドソンへ 

Harley Davidson XL1200 L Sportster Low
ハーレー ダビッドソン スポーツスター ロー



0 件のコメント :

コメントを投稿